大阪地方裁判所 昭和34年(行)73号 判決 1960年4月27日
大阪府布施市下小坂二一一番地の二
原告
沖光明
右訴訟代理人弁護士
小林多計士
大阪府布施市永和二丁目三番地
被告
布施税務署長
松田寿栄男
右指定代理人
大阪法務局訟務部長
今井文雄
法務事務官
永田嘉蔵
大蔵事務官
安友良雄
右
同 小倉定
右当事者間の昭和三四年(行)第七三号酒類販売業免許拒否処分取消請求事件について当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告は本件口頭弁論期日に出頭しないが、その陳述したものとみなされた本件訴状によれば、請求の趣旨として「被告が原告に対して昭和三四年九月二二日なした酒類販売業免許拒否の処分を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との記載があり、請求の原因として「一、原告は昭和三四年四月一一日被告に対し原告肩書地を販売場の位置として酒類全種の販売業免許の申請をした。二被告は原告の右申請に対し酒税法第一〇条第一一号に該当するものとして昭和三四年九月二二日酒類販売業免許拒否の処分をなし、原告は右処分の通知を同月二六日受領した。三、被告が原告の免許申請を拒否したのは(一)原告の免許申請位置は現在同地域を販売網とする既存業者三名の競合地帯となつており、同位置より西北方及南西方は旧市街で発展の余地なく、東方に今後の伸長が期待されるが未だ人口増加住宅急増等の消費増大の現象は認めがたいこと。(二)申請者の過去六カ月間の販売実績石数を考えると制限数量の消化は、立地条件の関係より甚だ疑問であることを理由とするものである。四、しかしながら(一)原告の免許申請位置近辺には全然既存業者存在せず、既存業者は申請位置より遙か西方の被告のいう旧市街に存するのみである。また、申請位置附近には日日に住宅が急増し、従つて、人口も刻々増加しつつあり、現在においても充分な消費人口を有しており、かつ、既存の販売業者の販売状況に急激な変化を与え、需給調整が乱れる懸念は全然ない、(二)原告は、酒類の販売に多年の経験を有し、現に雑酒の免許を得てこれが販売に従事しており、前記立地条件よりすれば充分の制限数量を消化しうるものである。五、よつて、被告は原告の前記申請を不当に拒否したものであるので原告は本訴請求に及ぶ」との記載がある。
被告指定代理人は主文同旨の判決を求め、答弁として「本件訴は、原告の酒類販売免許の申請について、被告が酒税法第一〇条の規定による免許の拒否処分をなしたことを違法であるとして、これが取消を求めるものであるが、右の営業免許拒否処分は訴願法第一条第一項第三号の規定により訴願ができるにかかわらず所定の訴願期間を経過した現在においてもこれが提起がなされていない。従つて、本訴は不適法として却下さるべきである。」と述べた。
理由
酒税法第一〇条に基く営業免許拒否処分に対しては、訴願法第一条第一項第三号により訴願が認められているから行政事件訴訟特例法第二条によりその訴願裁決を経た後でなければ、その処分取消の訴訟を提起することができないところ、本訴は、被告が原告の酒類販売業免許の申請に対し、酒税法第一〇条第一一号に該当するとしてなした営業免許拒否処分を違法としてその取消を求めるものであるが、原告において訴願を提出したとの主張立証がなく、また訴願を経ないことについて正当な事由があるものと認めるにたりる資料もない。
そうすると、本件訴は行政事件訴訟特例法第二条所定の訴提起の要件を欠く不適法な訴であるから、これを却下すべく、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小野田常太郎 裁判官 阪井昱朗 裁判官池尾隆良は転任のため署名捺印することができない。裁判長裁判官 小野田常太郎)